放浪者の物語3 「決意」
埋め尽くされた己への恐怖に支配される。
自分が怖い。自分が何者であるかわからないほど怖いものはない。
中途半端な人間をやっているのであれば尚更だ。
いつものように不安を落ち着かせようと日課の瞑想に入る。
なぜか、頭によぎったのはつい最近の話。
とある女性魔術師が俺を訪ねてきて、所有するデイドラのアーティファクト「ドーンブレイカー」を貸してほしいとお願いに来たことだ。
『貸してほしい理由を聞いてから考えよう。』
来訪した彼女に俺は言うと、彼女は「貴方が解決したある事件の話には続きがありました。」と話を切り出して、今までの経緯を話し始めた。
俺はしばらく彼女の話を聞き入る。
最後まで話を聞いたときには彼女の過去、そしてアーティファクトを貸してほしい理由がわかった。
『話はわかった。喜んで貸そう。』
そう言って、家の展示台に置いていた「ドーンブレイカー」を彼女に渡す。
女性魔術師は「ありがとう!これで私は自分自身に決着をつけることができるわ。」
剣を受け取る彼女の顔を見たとき、闘いを決意した戦士だった。自分なんかより強い戦士の顔をしていた。
手伝えることはないかと訊ねてもきっと断るだろう。
それだけの決意を秘めているのがわかる。だから俺はつい聞いてしまったのだ。
『怖くないのか?』と、そして、俺は自分の恥を話していた。
女性魔術師「怖いわ。とてもね。でも避けて通れないから、私が私であるために
私自身であること証明するために自分を犠牲にしてでも受け入れて立ち向かいたい。だからいくわ。」
そうして、彼女は受け取った剣を腰に差し外に出ようとしたときに、振り向いて俺にこう話してくれた。
女性魔術師「抱えている気持を理解することは難しいけれど、怖いと感じることは恥ではないわ。当たり前だと思うの。それは人としているために必要なものだと思うわ。」
「貴方は、ドラゴンボーンである前に、半分が吸血鬼であることを悩む前に一人の人間よ。だから受け入れてあげて、貴方自身を。」
そういって彼女は立ち去った。そして、後日ドーンブレイカーだけが届けられた。
『もう一人のドラゴンボーン・・・ソルセイム島か・・・。』
以前に襲われた襲撃者の情報を覚えていた。
「ドラゴンボーンは一人だけでいい」という襲撃者の言葉を。
二人目のドラゴンボーンのことを気になっていた。
俺は旅の仕度を整えてウィンドヘルムに向かう。
ソルセイム島を目指すことにしたのだ。
今度の旅はきっと今までの答えが見つかりそうな気がしていた。
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久々な更新です。今回はここまで。
次回へ続く!